彼の音楽は、魂を揺さぶり、心を打つ。Curtis Fuller、その名前はジャズ史に刻まれるべき偉大なるトロンボーニストの一人です。彼の生涯はまるで物語のようであり、彼の音楽はその物語の中核を成しています。
1932年12月15日、アメリカのデトロイトで生まれたFullerは、若干9歳で母を亡くし孤児院で育つこととなります。しかしそこで出会った修道女の一人が彼にジャズという音楽を紹介し、そこから彼の人生は一変しました。Illinois JacquetとJ. J. Johnsonの演奏に触れることで、彼の心にジャズの火が灯ったのです。
16歳のとき、Fullerはトロンボーンを手にしました。そして、彼はそれを吹き鳴らすことで自分自身を解放し、才能を開花させていきます。軍隊に従軍した彼は、戦場で音楽を奏で、帰還後はジャズの舞台でその才能をいかんなく発揮しました。
ほどなくしてブルーノート・レコードのAlfred Lionの目に留まったFullerは、その後数々の名盤に参加し、ジャズ史にその名を刻んでいきます。Art BlakeyやJohn Coltraneとの共演、自身のリーダーアルバムの制作など、彼の音楽はジャズシーンに新たな風をもたらしました。そんな彼の作品の中でも特に秀逸なのはなんと言っても“Blues-ette”でしょう。このアルバムは、Benny Golsonの影響を受けた精巧なアレンジと、FullerとGolsonの間に生まれる音楽的な相性が特徴です。リラックスした雰囲気と美しい調和がクインテット全体を包み込み、FullerとGolsonの息の合った演奏が耳に心地よい余韻を残します。アルバム全体が、当時一般的だったブロウセッションとは異なり、緻密に構築されたアレンジと楽曲に焦点を当てています。Tommy Flanagan’の見事なバッキングは、グループ全体のサウンドを支え、他のメンバーのソロを引き立てます。“Blues-ette”は、Curtis Fullerが自らの道を切り拓いていく過程で、その才能と個性を示した重要な作品です。
また、彼の人生は波乱万丈であり、喜びと悲しみが交差する道のりでした。彼は1980年にCatherine Rose Driscollと結婚しましたが、2010年の彼女の死は彼の心に深い傷を残しました。しかし、その悲しみを音楽に変え、彼女に捧げたアルバムを制作することで、彼はCatherineへの愛を永遠に讃えました。
そして、2021年5月8日、彼もまたこの世を去りました。しかし、その音楽は永遠に残り、私たちの心を打ち続けるでしょう。彼の偉大なる遺産は、ジャズの魂と共に生き続けることでしょう。Curtis DuBois Fuller、永遠に私たちの心の中に響き続ける音楽の巨匠です。
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