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執筆者の写真ス・モンク カフェ

【追悼】David Sanborn:カテゴライズへの反逆


 David Sanborn(1945年7月30日 - 2024年5月12日)は、アメリカのアルトサックス奏者であり、そのリズム感と創造性で多くのファンを魅了しました。彼の音楽はジャズ、ポップス、R&Bを融合させた独特のスタイルで、ジャズシーンだけにとどまらず、広く音楽界全体に大きな影響を与えました。


初期のキャリアと音楽の道

 Sanbornはフロリダ州タンパで生まれ、ミズーリ州カークウッドで育ちました。幼少期にポリオを患い、医師の勧めで胸の筋肉を強化し呼吸を改善するためにサックスを始めました。彼にとって、当時Ray Charlesのバンドでアルトサックスを吹いていたHank Crawfordはとても大きな存在であり、初期の音楽的バックボーンの形成に重要な影響を与えました。


セッションミュージシャンとしての活躍

 Sanbornは高校生になる前からサックスを演奏しており、セッションミュージシャンとして活動していました。ブルースミュージシャンのAlbert KingやLittle Miltonらと共に14歳で演奏活動を始め、音楽を学ぶためにはじめはノースウェスタン大学に通いましたが、その後アイオワ大学に転校し、そこでサックス奏者のJ.R. Monteroseに師事しました。1967年にはPaul Butterfield blues bandに参加しました。彼は1967年から1971年にかけて、ホーンセクションのメンバーおよびソリストとしてButterfieldの4枚のアルバムのレコーディングに参加し、またその間、1969年8月18日に行われた伝説のロックフェスティバル「ウッドストック」にも出演しました。その後、Stevie WonderやDavid Bowie、James Taylorなどの有名アーティストとも共演を果たしています。


ジャズ・フュージョンとソロキャリア

 1970年代半ばにはBrecker Brothers bandに参加し、ジャズ・フュージョンシーンでも活躍しました。この頃に録音したアルバム"Taking Off"はジャズ/ファンクのクラシックとされています。Sanbornはスムーズジャズとよく結び付けられますが、若い頃の彼はRoscoe MitchellとJulius Hemphillからフリー・ジャズを学んでおり、 アルバム"Another Hand"においては前衛的なミュージシャンがフィーチャーされていたりするなど、様々な音楽スタイルに挑戦しました。


音楽の多様性と影響力

 1980年代と1990年代にはセッションプレイヤーとして、またソロアーティストとして幅広い音楽活動を行いました。James Brown、Eric Clapton、Paul Simon、Stevie Wonder、Bruce Springsteen、Jaco Pastorius、カシオペア、Gil Evansなど、ジャンルを問わず数多くのアーティストと共演し、その音楽に独自の色を加えました。特にMarcus Millerとのコラボレーションでは多くの名盤を生み出しました。


ラジオ・テレビでの活躍

 Sanbornはテレビやラジオでも活躍し、1980年代後半からは『ナイト・ミュージック』の共同ホストを務め、多くの著名なミュージシャンと共演しました。また、1988年から1989年にかけてはシンジケートされたラジオ番組『ザ・ジャズ・ショー・ウィズ・デヴィッド・サンボーン』をホストしました。


晩年と遺産

 2021年には、新型コロナウイルスのパンデミックによりライブパフォーマンスが中止された中、Zoomを使ったマスタークラスや"Sanborn Sessions"と題したバーチャルなライブパフォーマンスを行い、Marcus MillerやChristian McBride、Sting、Michael McDonaldといったアーティストと共演していました。しかし今月の12日、David Sanbornは長年闘病していた前立腺癌による合併症のため、78歳で亡くなりました。


 彼の音楽は、その豊かな創造性とひとつのカテゴリーに収まりきれない多様性、そして深い感情表現によって、多くの人々にインスピレーションを与え続け、その影響はこれからも続くことでしょう。Sanbornの偉大なキャリアとその遺産に敬意を表し、彼の音楽が未来の世代に受け継がれていくことを願っています。

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