「10 to 4 at the 5 Spot」というアルバムは、その名前からも一風変わった雰囲気を感じさせます。このアルバムは、Pepper Adams Quintetによるライブ録音であり、1958年4月15日にニューヨークの伝説的なバー、Five Spot Caféで収録されました。
このアルバムは、サックス奏者のPepper Adamsにとって初のリーダーアルバムであり、同時にリバーサイドレーベルが行う最初のステレオライブ録音でもありました。しかし、録音中にはいくつかの興味深いトラブルが発生しました。まず、Five Spot Caféのピアノは元々調子が悪く、演奏が進むにつれて音程がずれていくといった問題をかかえており、これにより、Adams自身も音程感を失うほどの状況に陥るほどでした。さらに、録音中にはマイク接続の問題が発覚し、予定していた4つのセットすべてがモノラルで録音されていたことが判明しました。そのため、急遽追加のセットが行われ、それがアルバムに収録されることになったのです。
しかし、これらのトラブルにもかかわらず、このアルバムは素晴らしい音楽性と卓越した演奏で満ちています。Adamsの力強いサウンドと洗練されたプレイは、聴衆を魅了し、彼のバンドメンバーも彼の演奏を支えています。バンド全体のバランスが絶妙であり、聴き手に不快感を与えることなく、力強い音楽を楽しむことができます。
“Do not fear mistakes. There are none”というのはMiles Davisの言葉ですが、このアルバムでも、最悪の状況下でありながらも失敗を恐れずに果敢に演奏することで、名演を残すことができたミュージシャンの姿を見ることができます。
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